(11/30)出版UD(ユニバーサルデザイン)研究会という団体が主催する"iPodで読書できるか? ~オーディオブック普及の可能性を考える"というタイトルのセミナーに参加した。下記の3人の講師がオーディオブックについて講演した(スピーカーのプロフィールは出版UD研究会webより転載)。
■ゲストスピーカー
岡田雅之さん(新潮社メディア室室長)
☆約20年にわたり「新潮カセットブック」「新潮CD」シリーズなど数多くのオーディオ
ブックを出版しつづけている草分け的な出版社。
境 実香さん(オフィス・コア代表)
☆10年以上にわたり、著者・出版社の許諾を得たうえで、視覚障害など活字での読書が困難
な読者向けにカセットやデイジー図書を制作・発行している音訳図書の専門出版社。
木村福夫さん(TBSサービス経営システム部部長)
☆過去の放送音源などを中心に、新しいネット配信型のオーディオブック出版を模索してい
る。
面白かったのは新潮社の話。新潮社は1987年からカセットテープによるオーディオブックを販売している。最初はアメリカでオーディオブックが売れていることからスタートしたらしい。アメリカでは車の通勤時間の有効な活用法としてオーディオブックが聞かれていて、紙の書籍の10%(単位不明)がオーディオブックであったとのこと。(セミナー参加者のコメントによると、2005/9の情報では、アメリカのオーディオブック市場規模は10億ドルで、その内25%が既にiTunes版になっているらしい)
新潮社が販売を開始すると、販売は好調で、当時は1冊1600円のオーディオブックが15000部程度売れ、月に3~4点販売していたとのこと。アメリカとの違いは日本ではアウトドア利用がほとんどなく、中高年層が家の中で紙の本を読みながらオーディオブックを聞く、という点で、読まれるのは夏目漱石などの古典文学がほとんどらしい。文芸作品をじっくり味わうためにオーディオブックを利用しているのだそう。
流通経路は、発売当初は書店がメインだったが、団塊世代が退職し、書店に立ち寄る機会が減ってくるに従い、通販の比率が高まっているとのこと。
電子配信にも参入しており、大日本印刷と共同でSSwebというサービスを行っている。1800円/月の会費で聞き放題(ダウンロードはできない)。電子配信はビジネスとしては伸び悩んでいて、原因は、操作が面倒(テレビのようにスイッチオンでチャンネルを回せばOKではなく、ブラウザ起動、ID/Password入力が必要など)、会費が高い、ネットワークの安定性(ストリーミングなので長時間聴いていると不安定になる場合もあるらしい)、とのこと。
日本でも通勤電車の中で英会話のカセットを聴いたりする人がいるようなので、iTunesでお勉強する人はこれから増えるかな?
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